現代のニーズに合わせて物件の内装や間取りを変更できるリノベーション。
高い空室改善効果が期待できる一方で、原状回復よりも大きな工事費用が掛かることから中々踏み切れずにいる方もいらっしゃるでしょう。
もちろん工事費用も大切なポイントですが、単に金額だけでやらないことを選択してしまっては勿体ない。
長期的な収支で比較してみると「原状回復よりもリノベーションの方が収支が良かった!」という場合もあるのです。
今回は空室対策を検討する上で参考にして頂きたい、リノベーション収支の考え方をお伝えします。
目次
1.リノベーション収支の計算方法
まず、リノベーション収支を理解する上で必要となる、表面利回り、実質利回り、回収期間という言葉の意味と算出方法をお伝えします。
これらの数字は、ご自身の所有する物件にリノベーションが適しているのかを判断する基準になります。
表面利回りとは
表面利回りとは、マンションやアパートの維持管理にかかるコストは考慮せず、工事費に対してどの程度の家賃収入が得られるかという見方で収益を表す数値です。
リノベーション物件の場合、基本的には「年間の賃料アップ額÷工事費×100」で算出されます。
物件代に加え土地代も必要になる新築物件の表面利回りは、現在約3%ほどとなっています。
そのため、表面利回りが5%〜10%のリノベーションであればとても良い投資だと言うことができるでしょう。
その場合、年間の賃料アップ額は24万円です。
そのため、表面利回りは、24万円÷300万円×100=8%となります。
実質利回りとは
実質利回りとは、マンションやアパートの維持管理にかかるコストまで考慮した、実質的な収益を表す数値です。
「(年間家賃収入の差額-維持管理コスト)÷工事費×100」で算出されます。
実質利回りは(24万円-10万円)÷300万円×100=4.6%となります。
回収期間とは
回収期間とは初期投資額(工事費)が家賃収入によって回収し終わるまでの期間のことを指します。
回収期間は「工事費÷年間家賃収入」で計算することが出来ます。
目安の期間は、3年〜3年半と考えられることが多いです。
賃料アップはもちろん、空室が埋まりやすく、物件価値が下がりにくくなるリノベーション。
一時的な費用でなく、長期的な収益を比較して判断することが重要です。
弊社では賃料査定を含めて長期的な収支を算出しご提案しています。
原状回復かリノベーションかで迷われているオーナー様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
300万円÷120万円=2.5
つまり約2年半で施工費が回収できる計算となります。
どちらを重視すべきかはオーナー様のご状況により異なります。
投資を目的に物件を所有している、将来的に売却を予定しているという方は、リノベーションによりいかに賃料や稼働率が上がるか、物件の評価額が上がるかという観点から、表面利回りを重視すると良いでしょう。
2.10年収支という考え方
ここまで、表面利回り、実質利回りや回収期間についてお話しさせて頂きました。
しかし、数字だけで施工の実施を判断してはいけません。
リノベーションには賃料アップ効果だけではなく、
・賃料の低下を遅らせる
・空室期間を短縮させる
といった効果も期待することが出来るため、それらを考慮して検討する必要があります。
そこでよく利用されるのが10年収支です。
10年収支とは、当初かかった工事費や賃料アップ額のみから収益率を求めるのではなく、10年と言う長期的なスパンでの収支を、賃料の下げ幅や、空室期間、数回の退去に伴う原状回復費用などを想定した上で算出した長期的収支です。
3.10年収支シミュレーション
では実際に、原状回復した場合とリノベーションした場合、それぞれのケースを10年収支でシミュレーションして見ましょう。
※従前家賃8万円、リノベーション後家賃10万円、施工費が300万円とします。
※固定資産税など、リノベーション・原状回復費以外の諸経費は考慮しないものとします。
原状回復の場合
リノベーションの場合
累積収支の比較
シミュレーションを比較して頂くと、原状回復(表左)の総収益額が550.4万円なのに対し、リノベーション(表右)の総収益額は772.2万円となっています。
リノベーションを行うと初年度は赤字となりますが、10年後を比較するとリノベーションの方が221.8万円多く利益が得られるという計算になります。
近く売却を予定しており数年間は満室稼働できそうなお部屋であれば、前半5年の収益を重視し原状回復を行うのが良いかもしれません。
しかし長期保有を前提としているのであれば、10年収支を算出し、損益分岐点と、得られる収益の総額で比較することが良いでしょう。
「工事費用が高いから…。」と悩まれる方も多いリノベーションですが、
原状回復工事と比較して家賃の下落が緩やかで、空室期間も短く、さらに一度工事してしまえばしばらく設備交換の必要が無いため、10年の総収益額で見るとリノベーションの方がおすすめな場合も多くあるのです。
しかしこの収支表は、10年後も引き続き高い競争力を持ったリノベーション物件であることが前提となります。
インターネットが普及し、手軽に多数の物件をチェックすることができる現代では、残念ながらリノベーションをしたからといって確実に入居が決まるとは限りません。
リノベーションを選択する際には、長期的に物件価値が持続し理想的な収支が叶うリノベーションなのかどうかという視点から施工内容を検討することも大切です。
参考コラム:賃貸リノベーションにおいて大切なこと
賃料アップはもちろん、空室が埋まりやすく、物件価値が下がりにくくなるリノベーション。
一時的な費用でなく、長期的な収益を比較して判断することが重要です。
弊社では賃料査定を含めて長期的な収支を算出しご提案しています。
原状回復かリノベーションかで迷われているオーナー様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。