あてにならない?管理会社が公表する入居率
どんな業種にも本音と建て前がある。非合理な慣習がはびこっていたり、不公平がまかり通っていたりということが一つや二つはある。「まあ、あんまり目くじら立てずに穏便にいきましょう」という忖度で成り立つものが「業界」だというのも一理だ。
だから、ガソリンに二重課税があったり、家電量販店にはメーカーからの応援スタッフがいても、大きな問題にはならない。
不動産業界にもそういった慣習はあるのだが、賃貸住宅の入居率(もしくは空室率)についてはっきりとした基準がないのは賃貸業全体の発展を妨げていると思うのだ。
複数の管理会社のHPを確認してみると、たとえば「管理戸数5000室、入居率99.1%」といった表がある。
しかしこの数値には何ら信憑性を担保するものがない。額面通りに受け取っていいものやら、いつも悩んでしまう。
各社の測定方法がバラバラ
一口に入居率といっても、毎月の数値を公表する企業があれば、○月末時点といった1年のある時点の入居率だけを公表している企業もある。
どうやら後者が一般的なようで律儀(でもないのだが)に毎月、公表している企業は一部しかない。いつ時点の入居率かは表記がない企業も多い。
その次に多いのが「3月末時点」だが、一般的には入居者が入れ替わるこの月が最も入居率が良く
なるといわれている。ある管理会社の経営幹部によると「管理会社の本当の実力がわかるのは7〜8月になる」というが、ならば3月末表記は、さしてあてにならないのだろうか?
管理戸数に関する疑惑は計測日だけではない。管理会社によって計測方法もバラバラだ。1ヶ月のうち1日でも入居があれば、その月の末日時点で入居とするという企業もある。
ちょっと複雑なものだと、365日のうち8割の期間(292日)で入居があると入居とする企業もある。
月末時点で入居者がいるかいないかで計測すればわかりやすいと思うのだが、集計が煩雑になるのだろうか?ある賃貸管理会社によると、「コンピュータシステムがあるのだから入居率の測定など簡単」というのだが…手間がかかるにしても、会社の現状把握にも必要な数値だと思うのだが…
さらにいうと家賃を下げての入居とか、オーナーが多額の広告料を支払っての入居なら、入居率と管理会社の実力との乖離がまた拡がってくる。
まあこれ以上は、ややこしくなりすぎるのでやめる。
しかし、入居率で管理会社の実力を比べられないのは、物件を任せるオーナーにとって不利益が生じる。そして健全な競争が生まれないので、業界の発展につながらないのだ。
こういった慣習は変わってほしい。
しかし慣習以前に、誰も問題視してないのかもしれないのだが。
住宅コラムニスト
西条阿南
新聞社を経て、フリーランスの記者、編集者として活動。
経済誌や週刊誌などに幅広く記事を執筆中。
8年間で5回の引越し経験があり、入居者目線で鋭く意見を発信する。
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賃貸住宅では従来リフォームの設計、施工、入居者募集は別々の会社より提供されていますが、ハプティックでは、リノベーションの設計、施工を「TOMOS」、リノベーション後の入居者募集を「goodroom」により、ワンストップで提供することでオーナー様の空室解消や家賃下落に対する不安を解消し、築古賃貸不動産のバリューアップを行っています。工事のご相談はお電話・お問い合わせフォーム(こちら)よりお気軽にお知らせください。