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【コラム】ロンドン高層アパート火災の衝撃

死者・行方不明者は79人

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やや旧聞に属する話題ですが、ロンドンの大規模マンション火災について情報が集まってきたので触れておこうと思う。

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取り上げるのは、今年6月14日に発生したロンドン西部ケンジントン&チェルシー区にある高層集合住宅で発生した大規模火災だ。14日未明に発生した火災は鎮火まで24時間以上を要し、現在までに死者・行方不明者は79人にのぼっている。

発生からしばらくたつが、正確な犠牲者の数は不明のままだ。これは、火災が長く続き識別が難しい遺体があると予想されることと、発生時の正確な居住者数がわからないためだ。英紙では、死亡者数が確定するのは来年になるとの報道もでている。
なぜ居住者数がわからないかというと、現場となったグレンフェル・タワーはカウンシル・フラットと呼ばれる低所得者向けの公営住宅で海外からの移民が多く住んでおり、届出なしに知り合いの部屋に身を寄せていた人がいる可能性があるためだ。火災発生時に「ロンドン・タワマン火災」などと報じられが、高級なイメージのあるタワマンとは大きくかけ離れた建物だった。

燃え広がるまで15分、外壁が延焼の原因か?

それにしても、なぜこれほどの惨事を招いてしまったのか。

英紙に載った目撃者の証言によると、24階建ての建物のほとんどに火の手が回るまで15分ほどしか掛からなかったという。

原因の一つとして注目されているのは外壁材だ。
同タワーでは2016年5月に行われた大規模改修で外断熱設備が追加された。
BBCなどによるとコンクリートの外壁に断熱材を貼り、外側に通気層を通したうえで、金属製のサイディングで覆った。この通気層に炎が入り込み、あっという間に燃え広がったという専門家が推測している。

この疑惑を建築業界向けの専門誌である日経アーキテクチャ7月27日号で「炎の死角」と題し、詳細を特集している。実はこの高層ビルの外壁火災は海外で度々起こっているという。2009年には北京、2010年には上海、2015年にもドバイで大規模な火災があった。
このような外装による外断熱は新築、リフォームを問わず世界的にも増えている。何らかの対策が必要となる可能性もでてきた。

日本では起きるのか?

では日本ではこのような大規模火災は起きるのか。
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大手メディアなどでは日本の高層集合住宅ではほとんどでベランダがあるため、海外の事例のような延焼はしないといった意見が紹介されていた。確かにロンドンのグレンフェル・タワーにはベランダがない。
しかし日経アーキテクチャでは東京大学大学院の野口貴文教授の言葉を紹介し、こういった楽観論に警鐘を鳴らしている。

日本の建築基準法は外壁の非損傷製、遮熱製、遮炎性に関する規制があるが、外装材の燃え広がりに関する定めはない。そのため日本でも外壁火災リスクは潜在的にある。ロンドンのように外断熱方式の中高層建築物は、使用建材の性能や組み合わせの総点検が必要だ。

(野口貴文教授談)

先にあげた世界中で起きている高層マンション火災は外壁を伝ってのものなので、スプリンクラーなどもあまり意味をなさない。建築基準法には遮熱製などの主に住み心地に関する定めは多いが、外壁用建材が燃え広がらないようにする規制はない。今後、議論が必要になってくるだろう。

いまできること

さて、それでは現状で賃貸住宅オーナーや管理会社ができることはあるだろうか。

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非常階段や共用廊下に荷物があれば片付け、入居者にも同様のお願いをすること。さらに消化器の確認や、防火への声かけなど基本的な対策が有効とのことだ。
入居者や管理者の意識に勝る防火策はないのである。


住宅コラムニスト

西条阿南

新聞社を経て、フリーランスの記者、編集者として活動。
経済誌や週刊誌などに幅広く記事を執筆中。
8年間で5回の引越し経験があり、入居者目線で鋭く意見を発信する。

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