賃貸住宅における差別化とは、満室稼働のために競合物件にはない魅力付けを行うことです。
今回は差別化の必要性と、差別化のアイデアを実際の事例を交えながらご紹介します。
目次
賃貸住宅において差別化は必要なの?
高い空室率と募集期間の長期化
募集物件の空室傾向を示す、タス空室インデックス(空室率TVI)(※1)によると、東京都の賃貸住宅の空室率は2022年10月段階で10.44ポイントとなっております。
2023年2月現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令はほとんどなくなり、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に変更される議論も始まっております。
その結果、全体的に空室率については回復傾向にはありますが、高い水準にあります。
また、平均募集期間で見ると2022年10月段階で4.85ヶ月となっており、コロナ前の2019年10月は2.76ヶ月(※2)と比べるとおよそ2ヶ月空室期間が長引いていることになります。
(※1)株式会社タス「賃貸住宅市場レポート首都圏版関西圏・中京圏・福岡県版 2022年12月」
(※2)株式会社タス「賃貸住宅市場レポート首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2019年12月」
さらに少子高齢化・人口減少により、賃貸住宅の空室率は今後上昇することが予測されています。(※3)
空室を抱えるマンション・アパートオーナー様の中には「繁忙期になれば入居が決まるかもだろう」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこのような市況の中で今後賃貸住宅は供給過多となります。
ユーザーにとって魅力的に映らない物件は、長期空室となってしまう可能性が高いでしょう。
(※3)株式会社野村総合研究所「2030年の住宅市場と課題〜人で不足の深刻化により、飛躍的な生産性向上が求められる建設現場〜」
インターネットの普及による競合物件の増加
現在では、インターネットを利用したお部屋探しが主流となっています。
これにより、ユーザーは以前よりもはるかに多数の物件情報を閲覧し比較することが可能になりました。
つまりオーナー様にとっては競合物件が増え、問い合わせに至るまでのハードルが高くなっていることを意味します。
ユーザーは条件検索を利用しお部屋の内装写真を見て、問い合わせ・内覧をする物件を決めています。
まず問い合わせを得るために、多数の競合物件の中から目に留まるような工夫を行い差別化する必要があります。
差別化のアイデア
では、実際に賃貸住宅を差別化するにあたりどのような方法があるのでしょうか?
具体的な差別化アイデアをご紹介いたします。
方法1:条件で差別化
ユーザーは、ネットの募集掲載ページにて立地や設備といった条件検索を用いて候補を絞りお部屋探しをしています。
そのため該当する条件を増やすことで、入居者の間口が広がります。
■家具家電付き物件
家具家電付きのマンション・アパートは、家具や家電を買い揃える費用がかからず引っ越しにかかるコストも削減できるため、初めての一人暮らしや単身赴任の方に特に人気が高い条件です。
初期投資や家具家電のメンテナンスが必要となりますが、ユーザーとしては家具家電を買う必要がないため、家具なしの賃貸物件よりやや高めの賃料設定でも借り手がつきます。
家具家電においてはシンプルなものを選ぶようにしましょう。
家具家電付き賃貸では、お部屋の空間がほとんど完成してしまっており入居者が自由にカスタマイズすることがあまりできません。
個性的すぎる部屋にしてしまうと、かえって入居者の幅を狭めてしまう可能性があるため注意が必要です。
■ペット可、楽器可物件
ペットを飼育中の方、音楽を学んでいるまたは仕事としている方にとっては、ペット可・楽器可であることはそれぞれ希望度が高い条件となります。
しかしペット、楽器共に不可としている物件は多いため、可とすることで希少性が高まり差別化ができます。
しかし途中から不可としていたものを可とする場合には3つの注意が必要です。
一つ目は、現在の入居者からの理解を得る必要があることです。
ペットを飼育することは鳴き声などの騒音、毛などによる共用部が汚れることがあります。
楽器についても、同じく騒音として捉えられる可能性があります。
これらを理由に既存入居者の中には、条件を変更することに反対される方もいらっしゃるかもしれません。
後々にトラブルとならないように、条件を変更する前に既存入居者全員の意向を確認した上で判断しましょう。
二つ目はルールを定めることです。
ペット・楽器を可とすることには、上記のような懸念事項があります。
そのためペット可とする場合も、
・飼育動物の種類や頭数を制限する
・共用部では抱きかかえる
楽器の場合も
・楽器の種類を制限する
・演奏禁止の時間帯を定める
など、他の入居者とのトラブルを防止するための対策が必要となります。
最後に、室内をそれぞれに対応した仕様に変更することです。
ペット可とするのであれば、爪痕に耐えられるような傷に強いフローリング、においが付きづらいクロスなどにすることがおすすめです。
通常の素材を使用した室内でペットを飼育すると、退去後の原状回復費が大きくなります。
併せて、敷金を上乗せするなどペットを飼育することを前提としてクリーニング費用を算出して対応しましょう。
楽器可とするのであれば、近隣住民とのトラブル防止のためにも遮音性の高い壁に変えると言った対策を行うことが好ましいでしょう。
DIY・リフォーム可物件
「DIYやリフォーム可」は、入居者が壁紙や棚の取り付けなど室内を改装できるという条件です。
DIY・リフォーム可物件では、入居者が賃貸住宅でも自分好みのお部屋で暮らすことができ近年人気が高まっている条件です。
オーナー様にとっては、
・入居者の費用負担でお部屋の状態が良くなる
・入居者自身で改装を行うことでお部屋への愛着が生まれ、長期入居が期待できる
ことがメリットです。
しかし個性的すぎるお部屋に改装されてしまうと、次の入居が決まりにくくなってしまうという懸念があります。
改装できる範囲を限定する、事前に施工内容を確認するなどしておくと安心でしょう。
カスタマイズ賃貸という選択肢も
入居者を先行募集し、壁紙・小物・間取りなどの施工内容を選んでいただいた上でリノベーション施工を行うサービスです。
賃貸でも自分の好みが反映されたお部屋に住めるため、入居者様にご好評いただいています。
入居者様には、グッドルームがご用意した数パターンのデザインの中から壁紙・小物・間取りなどをお選び頂きます。
そのため入居者が自由にDIYすることで懸念される奇抜な柄やデザインのお部屋に仕上がることはなく、2回転目以降の入居付けも心配がありません。
また、入居が決まった後にリノベーション工事を実施するためリノベーション後の空室リスクも払拭されます。
方法2:設備・間取りで差別化
賃貸住宅では、シンプルなユニットバスに、コンパクトなキッチンや収納、画一的なデザインの内装といったように写真では見分けが付かないような似たお部屋がたくさんあります。
似ている物件が多いからこそ、特別な設備や間取りを取り入れることで早期成約に繋がりやすくなります。
■カウンターキッチン
(左:リノベーション前 右:リノベーション後)
開放感があり、コミュニケーションを取りながら調理ができるため、2人暮らしや小さなお子様がいるファミリーに人気が高いカウンターキッチン。
賃料アップにも繋がりやすい設備です。
しかし、キッチンを対面式に設置すると壁付けにするよりも広いキッチンスペースが必要となります。
キッチンスペースが広い代わりにダイニングスペースが狭くなってしまってはかえってマイナスとなってしまうため、間取りにもよりますが少なくとも40㎡以上のお部屋で検討されることがおすすめです。
写真のお部屋は、リビングの中心に高級感のあるカウンターキッチンを設置しています。
キッチンが主役の印象的なお部屋となり賃料32万円で成約しました。
この物件の詳細はこちら
>>施工事例No.37「タワーマンションをさらに賃料アップさせたい」
■造作デスク
(左:リノベーション前 右:リノベーション後)
造作デスクは食卓、家事スペース、お子様の勉強机など汎用的に使用できる設備です。
また最近ではコロナウイルス感染拡大によるテレワークの普及により、ワークデスクとしても需要が高まっています。
ユーザーは部屋に合ったサイズのデスクを新しく購入する必要がなく、またすでにデスクを所有している方も棚として使用できるため多くの方に喜んでいただけます。
こちらは早期入居付けと賃料アップを目指すにあたり、差別化要素として造作デスクを設置したお部屋です。
リビングの端に2人掛けの造作デスクを設置することで、デッドスペースを差別化ポイントに変えています。
この物件の詳細はこちら
>>施工事例No.71「大幅な賃料アップを目指せる、リノベーションをしたい」
■書斎
造作デスクと同様に、テレワーク普及により需要が高まっているのが書斎です。
グッドルームのユーザー様においても、テレワークを前提に個室が多いお部屋を希望される方が増えています。
寝室とは別に書斎があることで、複数人で住まわれている方も生活音などを気にすることなくお仕事に集中することができます。
また、書斎内にハンガーパイプなどをつけることもおすすめです。
学習や仕事で使いたい時は書斎として使いながらも、ウォークインクローゼットとしても利用できます。
■広い土間
ゆったりとした広いスペースを設けた土間も、特別感があり差別化ができます。
駐輪場がないマンションでは土間があることで駐輪場代わりとなり、懸念点が払拭されます。
またベビーカーなど子供用品を置くスペースとしても活用できるため、小さいお子様がいるファミリー層をターゲットとしたマンションにおいてもおすすめです。
方法3:デザインで差別化
多くの入居者様は、室内の写真を見て内覧することを決めています。
そのため印象に残りやすいデザインにすることは、問い合わせ数に大きく影響します。
■アクセントクロス
(左から室内壁、天井、洗面所にアクセントクロスが使用されています。)
白色であることが多いクロスですが、一面だけ色を取り入れることでメリハリの効いたお洒落なお部屋になります。
とはいえ、奇抜すぎる色や柄物のクロスは入居者を選ぶため、どんな家具にも馴染みやすい落ち着いたデザインのものを選ぶことがおすすめです。
■無垢床
天然木ならではの木目が美しい無垢床。
クッションフロアやフロアタイルが主に使用されている賃貸住宅では、無垢床フローリングを使ったお部屋は希少価値が高いです。
無垢床は経年変化して風合いが変わっていきます。
グッドルームのユーザー様の中で無垢を良いと思ってくださる方は、革のお財布を長年愛用するように「良いものを丁寧に長く使う」というマインドをお持ちの方が多い傾向にあります。
そのような方にご入居いただけると、お部屋も丁寧に扱ってくださることが期待できます。
>>関連コラム「グッドルームが賃貸リノベに無垢床を選ぶ理由」
モダンな和室
和室といえば、縁がついた緑の畳のお部屋をご想像される方が多いかと思います。
しかし最近は、色や形も様々でデザイン性の高い畳が増えています。
(左:リノベーション前 右:リノベーション後)
こちらのお部屋では、和室の畳をグレーの琉球畳に変更することでモダンな印象の和室にリノベーションしました。
お部屋探しにおいて懸念となりがちな和室が、この物件ならではの魅力となり差別化ができました。
この物件の詳細はこちら
>>施工事例No.60「広い戸建てを賃貸化したい」
方法4:共用部で差別化
最後にご紹介するのが、共用部分で差別化をする方法です。
大きな改修が難しい1Rマンションや戸数が多いマンションで有効な方法です。
入居者が自由に使用できる共用スペースを新設することで、付加価値となります。
■コモンスペース
キッチンを設置したコモンスペースです。
コモンスペースでは、ホームパーティなど入居者間交流を目的としたイベントなどを行うことも可能です。
入居者は予約制で自由に利用することができ、最近ではテレワークスペースとしてご利用される方も増えています。
こちらの物件は1棟リノベーションをする際に、半地下北向きで入居付けに苦戦することが予想されたお部屋を思い切ってコモンスペースとしてリノベーションした事例です。
コモンスペースができたことで物件全体のバリューアップに貢献し、周辺相場家賃より約15%高い賃料設定に関わらず、完工後1ヶ月以内に全室満室となりました。
この物件の詳細はこちら
>>施工事例No.15「一棟リノベーションし、賃貸化したい」
■ワークスペース
在宅勤務者へ向けたワークスペースを新設することもおすすめです。
マンション内にワークスペースがあることで、感染リスクを抑えながらもプライベートの時間と就業の時間をしっかりと切り替えることができます。
アデコ株式会社による調査では、2020年4月発令の緊急事態宣言時に65.7%の企業が在宅勤務を導入。
また、全体の53.2%の企業が在宅勤務を導入し、かつ今後も継続予定であると回答しています。(※3)
(※3)アデコ株式会社 【緊急事態宣言から半年後の企業テレワーク実態調査】より
このことからコロナウイルス感染拡大を機に働き方が見直され、今後もテレワーク比率はコロナウイルス発生前よりも高水準となりワークスペースの需要も継続して大きいことが予測されます。
グッドルームでは、愛知県にある元社員寮のマンションをワークスペースがあるコンセプトマンションにリノベーションしています。
施工途中ですが、入居申し込みとともにワークスペースの専有利用も併せてお申し込みいただいている方もいらっしゃるほど人気のマンションとなっています。
この物件のプレスリリースはこちら
>>「名古屋鉄道株式会社所有社員寮をコミュニティ賃貸マンション化し運営を開始」
■ランドリースペース
洗濯機置場を室内に設けることができない狭小のお部屋の場合は、共用部にランドリースペースを設けることがおすすめです。
共用スペースとすることで、お部屋を広く保て、室外に置くことで洗濯機が汚れてしまうという心配もなくなります。
こちらは1階部分に洗濯機と乾燥機を設置したコインランドリーを設けたマンスリーマンションです。
居室面積が15㎡と狭小のお部屋だったため、洗濯機置き場を設けず居室面積を最大限に確保しました。
この物件の詳細はこちら
施工事例No.86「15㎡ワンルーム社員寮の稼働率が下がっている」
人口減少による賃貸住宅需要の減少、インターネット普及により競合物件が増えたことで、今後ますます賃貸住宅における差別化は重要となります。
長期的に空室困りづらいお部屋へ差別化することが、安定した賃貸経営を叶える要となります。
グッドルームでは、設備・間取り、デザイン、共有部と包括的に差別化ができるリノベーションを行っています。
空室にお悩みのオーナー様はぜひ一度、お気軽にご相談ください。