空室の原因を考えたときに、賃料に問題があるのではないかとお考えになる方は多くいらっしゃいます。
たしかに賃料はどのお客様も重視される項目のため、賃料を下げることは入居付けを促進するには効果的な方法です。
しかし一度賃料を下げてしまうと、月日が経ち改修工事が必要になっても賃料収入が低いため施工費用を回収できない、そして十分な改修工事ができないためさらに賃料が下がるという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
そのため賃料を下げる選択をする前に、ご自身の所有物件の賃料が適正賃料であるのかどうか調べる必要があります。
今回は、現在の賃料が適切であるか調べるために、そもそも不動産価格はどのように算出するのかと、賃料に影響する要因を具体的にご紹介します。
目次
不動産価格の算出方法
不動産鑑定評価を行うにあたり使用されている手法が3つあります。
まずはそれぞれの特徴を確認しましょう。
積算法
積算法は物件と土地の購入価格から不動産価格を算出する方法です。
物件と土地の購入価格に、期待する利回りを乗じ、賃貸経営に必要な諸経費を加算して求めます。
賃貸賃料ではなく、主に売買時の価格算出に使う手法です。
収益分析法
収益分析法は、その物件運営から得られると期待される純利益から価値を算出する手法です。
ホテルや百貨店など事業用不動産の賃料の際には、この収益分析法で算出した賃料が重視される傾向にあります。
事例比較法
事例比較法はその名の通り、多数の事例を収集し、エリアや物件の特性などを考慮して比較し不動産価格を算出する方法です。
オフィスビルや住宅の賃料評価に使用されます。
事例比較法によるチェック方法
今回は賃貸住宅の賃料設定をする際に一般的に使われる事例比較法を用いて、ご自身の物件の賃料が適正かどうか調べるための手順をご説明します。
事例比較法の名の通り、類似物件を探した後、賃料に影響する要素を基に比較して適正賃料を把握していきます。
類似物件を探す
1.ポータルサイトにて類似物件を検索する
ポータルサイトにて、所有物件の最寄り駅や平米数などを入力し、エリアの相場や近隣物件の賃料を確認します。
そしてその中から、所有物件と特に構造や築年数などの物件特性が近い類似物件を見つけて賃料を比較します。
一点注意しなければならないことは、ポータルサイトには募集中の物件のみが掲載されており、成約物件を確認することができないことです。
そのためポータルサイトで募集中と掲載されている物件の賃料は、少し高めであることを前提に比較しましょう。
2.管理会社・仲介会社に相談する
ご自身で調べるだけでなく管理会社や仲介会社といった不動産会社に相談することも良いでしょう。
不動産会社では業界関係者のみが利用できる不動産データベースを利用しています。
一般的なポータルサイトと異なり、このデータベースでは成約物件の賃料が確認できます。
そのため、より正確に適切な賃料を算出することができます。
賃料に影響する要素を比較し、調整する
類似物件が見つかったら、賃料に影響する要素を詳細に比較しましょう。
賃料を決める要素は大きく分けて7つあります。
その項目において所有物件が優れているのか劣っているのかを比較し、賃料を調整しましょう。
賃料に影響する要因
1.立地
最も賃料に影響する要素は立地です。
当然のことではありますが、物件の所在エリアにより同じお部屋でも賃料は大きく変わります。
また、エリアだけでなく駅からの徒歩分数も賃料に影響します。
徒歩分数は短ければ短いほど良いですが、15分以内を許容範囲としてお部屋探しをされる方が多いため賃料設定の際にも一つの目安となります。
しかし同じ徒歩分数でも、道のりや周辺環境により入居者様が抱く懸念の大きさは異なります。
お部屋探しポータルサイト「goodroom」では、ただ徒歩分数を掲載するのではなく、
・坂道が少なく、自転車移動が快適
・電灯の多い道しか通らないため夜道も安心
などの情報を併せて記載することで、駅から遠いことの懸念を軽減しています。
また、自転車を使う方にとっては数分の差は大きな違いとなりにくくあります。
お客様を実際に案内するときの導線、例えば駅までの道並みや自転車置き場の有無なども考慮して、賃料を比較しましょう。
お部屋探しポータルサイト「goodroom」掲載ページ
街情報を豊富に記載し、駅から多少遠くても懸念とならないように工夫しています。
>>>お部屋探しのポータルサイト「goodroom」
2.構造
構造は、木造<軽量鉄骨造<<鉄骨造<RC造と賃料が高い傾向にあります。
それぞれの上がり幅は一概には言えませんが、新築の木造住宅と築30年のRC造が同水準の賃料設定となるとグッドルームでは考えています。
また、軽量鉄骨造と鉄骨造の間にはかなり大きな開きがあります。
できる限り同じ構造の物件を探し、比較すると良いでしょう。
3.平米数・間取り
平米数は±2㎡ほどを同水準として、物件を比較すると良いでしょう。
間取りに関しては、グッドルーム仲介部のお客様の傾向として、
地方では部屋数が重視され、1LDKよりも2LDKの部屋のほうが人気がある傾向があります。
一方、東京都では1世帯の平均人数が全国で最も低いことも影響してか(※1)、あまり部屋数は重視されず広いリビングが好まれる傾向にあり2LDKよりも1LDKの方が人気がありました。
(※1)総務省統計局 「都道府県,世帯人員別一般世帯数と世帯の種類別世帯人員」
しかし2019年のコロナウイルス感染拡大以降、在宅勤務が普及し、都内近郊に在住している方もワークスペースを確保するために個室が多い部屋を希望される方が増えています。
人気のある間取りであればその分賃料も高く設定することができるかもしれませんが、エリア特性や市況にも左右され、また賃料差もそれほど大きくはないため深く考慮する必要はないでしょう。
単身向け住居である1Rと1Kでも、間取りにより賃料の差はないとグッドルームでは考えています。
4.築年数
築年数も平米数と同様に±2年ほどの物件を探して比較すると良いでしょう。
築年数が経っている物件であってもリノベーション済みなどの物件であれば、もう少し築年数が浅い物件と対抗することができます。
リノベーション内容により対抗できる築年数は異なりますが、グッドルームのオリジナルリノベーション「TOMOS」のお部屋であれば、築20年前後(2000年前後に建築された物件)が競合物件となることが多いため、それらの物件と比較し賃料査定を行っています。
また、1981年6月1日以降に建築された物件か以前に建築された物件かということも注意しなければなりません。
1981年6月1日以前に建築されている物件は現行の耐震基準よりも規定が緩い旧耐震基準に沿って建築されています。
そのため新耐震基準で建築されている物件よりも耐震が劣る可能性があるため、1980年に施工された物件と1982年に建築された物件はさほど築年数は違いませんが、耐震基準の違いから賃料設定も異なります。
5.階数
基本的には上層階ほど良い眺望が見込めるため、賃料は上がります。
しかしエレベーターがない物件に関してはこの限りではありません。
エレベーターがない場合、3階以上となると、小さいお子様がいるファミリーや高齢者の入居は難しくなります。
このような物件には、賃料を抑えたい学生や新社会人の方など若年層の方が入居される傾向にあります。
このことを考慮し、ターゲットが入居しやすい賃料設定にすることがおすすめです。
また1階の物件は、防犯面や外からの視線が気になるなどの理由から一般的に避けられることが多く、賃料設定がやや下がります。
しかしベビーカーやロードバイクを使用している方々には、持ち運びが楽な1階はむしろ好まれます。
室内にこれらを置いておける広い土間スペースなどがあれば、1階であることはマイナスポイントにはなりません。
また、広い土間ほどの利点がなくても
・植栽でお部屋が隠れている
・ベランダの外はマンションの共用スペースである
など1階の懸念点を感じさせないお部屋であれば、大きく賃料を下げる必要はないでしょう。
4階・エレベーターなしの団地をリノベーション。団地の主な入居者層であるファミリー・高齢者から若年層2人入居へターゲット変更することで施工中に申し込みを獲得する人気物件となりました。
>>施工事例「4階・エレベーターなしのため、入居が付かない」
6.共用部
オートロックや宅配ボックス、Wi-Fiなどの共用設備が充実しているとプラス要因となります。
高価格帯物件が多いエリアなど、それら設備が備わっていることが標準となっている場合などは賃料を上げるのは難しくなりますが、近隣物件にそれら設備が備わっていない場合は、最大で3千円ほどの賃料アップが見込めます。
また、飲食店が入っているマンションは利便性が高い反面、衛生的な観点から賃料にはマイナス要素となります。
7.募集条件
家具家電付きなどのプラス条件があると賃料アップに繋がります。
家具家電付きの物件は、単身赴任中の方や初めての一人暮らしで家具家電を所有していない方に人気があります。
家具家電付き物件のメリットは、それらの購入費用が不要なため引っ越しにかかる総支出が抑えられることです。
そのため、月々の賃料が多少高くても選んでくださるのです。
また、プラス条件としてペット飼育可能であることが挙げられますが、ペット可物件は入居者の間口を広げ空室期間を短縮できる点には期待ができますが、賃料には大きく影響しません。
また賃料を上げる施策として、敷金・礼金といった初期費用を下げることで月額賃料を高めに設定することができます。
少しでも継続的な収入を増やしたい方は、月額賃料でなく初期費用で調整する方法を取ることも良いでしょう。
高すぎる賃料は空室期間を長引かせ、かえって大きな損失に繋がります。
反対に賃料が低すぎると、物件の維持に必要な費用を十分に得ることができず資産価値を下落させてしまいかねません。
そのため適正賃料をきちんと把握し、募集する必要があります。
相場賃料と物件特性を基に競合物件と比較し、適切な賃料を確認してくださいね。
グッドルームのリノベーション物件は、従前賃料から平均で16%アップして成約しています。
賃料はこれ以上下げられないが空室に困っているという物件については、一度ご相談ください。