長くマンションやアパート運営をされているオーナー様であれば誰にでも起こる可能性がある、所有物件の事故物件化。
単身者の増加や孤独死が社会問題化する中で、所有物件で死亡事故が起きてしまうことは決して珍しいことではありません。
今回は、事故物件の定義とご所有の物件が事故物件となってしまった際にどのように対処すれば良いのかご紹介します。
目次
1.事故物件とは?
事故物件とは一般的に、自殺や他殺、自然死や病気による孤独死など、何らかの理由で過去に人が亡くなった物件を指します。
室内のみでなく、エントランスや駐車場といった共有部で亡くなった場合も事故物件という扱いになると認識されています。
これまで事故物件には明確な定義がありませんでしたが、2021年10月8日に国土交通省により事故物件に関するガイドラインが制定されました。
ガイドラインによると事故物件とは
①「自然死(老衰、持病による病死)又は日常生活の中での不慮の死」が発生した場合
②「前述以外の死、又は特殊清掃が必要な死」が発生した場合
また、①の日常生活の中での不慮の事故とは自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた事故による死
と記述されています。
全ての事故物件において告知義務が必要となるわけではなく、事故の内容や貸し手側の価値観によって事故物件として扱うか否かは異なります。
2.事故物件になるとどうなるの?
①告知義務が生じる
告知義務とは、物件に賃借人の意思決定を左右するような重大な欠点がある場合、貸主や仲介業者が賃借人に対してあらかじめ欠点を伝えた上で契約を結ばなければならないという義務のことを指します。
宅地建物取引業法第47条にて、宅地建物取引業者がこの告知義務に反することは禁じられています。
告知義務が生じる物件を瑕疵(かし)物件と呼び、欠点の内容によって4種類に分かれています。
■物理的瑕疵物件
土壌汚染、雨漏りやひび割れ、シロアリ被害など、土地の状態や物件構造など物件そのものに欠陥がある物件のこと
■環境的瑕疵物件
周辺に火葬場や産業廃棄物処理施設がある、騒音トラブルがあるなど、物件を取り巻く環境に何らかの問題がある物件のこと
■法的瑕疵物件
都市計画法や建築基準法、消防法など、法的な基準を満たしていない物件のこと
■心理的瑕疵物件
人が亡くなった、反社会勢力の拠点跡地など、その場所で過去に起きた出来事が原因で心理的に嫌悪を感じる可能性のある物件のこと
いわゆる事故物件は、心理的瑕疵物件に分類されます。
今回のガイドライン制定により、「原則、人の死に関する事案が取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならない。」と定められました。
貸主や仲介業者は、これらの瑕疵について賃借人に告知しなければならないという義務を負っています。
■告知が必要ない場合
①自然死(老衰、持病による病死)や日常生活の中での不慮の死(自宅の階段から転落、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥日常生活の中で生じた不慮の事故)
※事案発覚からの経過期間の定めなし。
②日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で、告知が必要な死や特殊清掃が必要な①の死が発生したが概ね3年を経過している場合
※ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は適用されない場合があります。
③日常生活において通常使用しない共用部において①以外の死、特殊清掃等が行われた①の死
※事案発覚からの経過期間の定めなし。
■告知が必要な場合
①「告知が必要ない場合」に当てはまらない死の場合
②「告知が必要ない場合②・③」の場合でも事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案
③「告知が必要ない場合①〜③」の場合は、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合
④過去に人が死亡し、長期間にわたって放置されたことに伴い、特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合
⑤人の死の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合
※告げる場合は事案の発生時期期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因及び特殊清掃等が行われた場合はその旨を告げる。
②賃料が下がる
事故物件を所有される多くのオーナー様を悩ませているのが、賃料下落の問題です。
事故物件だからと言って賃料を下げなければいけないという決まりはありません。
しかし、事故物件の入居者様は相場よりも賃料が安いことを理由に入居される方がほとんどです。
競合物件と同じ賃料の場合、あえて事故物件に入居するということは考えづらいため、告知事項を考慮した賃料設定にする必要があります。
③入居者層が狭まる
「相場より賃料が安くなるなら」とあえて事故物件を選ぶ方もいれば、「絶対に事故物件には住めない」という方も一定数いらっしゃいます。
「絶対に事故物件には住めない」という方は、いくら賃料を下げたとしても入居に繋がらない可能性が高いです。
そのため、所有される物件が事故物件となってしまった場合は告知事項の内容が気にならない方にターゲットが絞られます。
「そんな人はいるのだろうか…?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんか、
近年では「事故物件=相場よりも安く住める」という認識が広まっており、事故物件専門ポータルサイトができるほど注目を集めています。
「賃料が安ければむしろ住みたい」という需要が生まれ、あえて事故物件の中からお部屋探しをされる方もいらっしゃいます。
3.事故が起きたら行うこと
事故が起こった物件では一般的に、特殊清掃をした後あらためて入居者を募集することになります。
特殊清掃のみでは次の入居付けが困難だと感じた場合は、さらにリフォームやリノベーションを行い入居募集することも多くあります。
必要な費用は保険で賄うことができることもあるため、事前にご自身が加入する保険の内容を確認しておきましょう。
①特殊清掃
事故が起きてしまった場合、そのまま貸し出すことは難しいため基本的に業者による特殊清掃を行います。
遺体の発見が遅れてしまったことで生じた汚れの除去、消臭、消毒作業を専用機器で行なったり、遺品の整理を行います。
基本的には事故前の状態に戻す、原状回復の作業となります。
②リフォーム・リノベーション
特殊清掃を行ったあと、次の入居付けをしやすくするためにリフォームやリノベーションをする場合もあります。
内装や設備が新しくなることで魅力が上がることはもちろん、「事故物件でも内装が変わっているなら気にしない」という方もいらっしゃるため、特殊清掃とリフォーム・リノベーションがセットで行われることも多くあります。
しかし、リフォーム・リノベーションをしても告知事項を伝えなければならないことは変わらないため、一般的には施工後も賃料を下げて入居募集をするケースが多いです。
グッドルームのリノベーション事例
告知事項を理由に賃料を大きく下げて募集することが多い事故物件ですが、グッドルームでは、大幅に賃料を下げる必要はないと考えています。
事故物件を選ばれる方というと「破格だから妥協して住んでいる」というイメージを持たれるかも知れませんが、「人が亡くなるのは自然なことなので気にならない」とそもそも告知事項を懸念と感じない方も多くいらっしゃいます。
そのような方々は、相場よりも少し賃料が低ければ事故物件でも入居を検討してくださいます。
また、希少価値の高い内装へリノベーションすることで「良い内装のお部屋に相場より安く住める」という訴求を行うことができ、大きく賃料を下げなくてもご入居いただけます。
特殊清掃による原状回復のみ行って賃貸すると、賃料は大きく下がり今後賃料を上げることは難しいことが予測されます。
一方でリノベーションを行えばお部屋自体の価値が上がっているため、事故から数年後には以前と同水準もしくはそれ以上の賃料収入が得られる可能性があります。
(左:リノベーション前 右:リノベーション後)
こちらは和室2部屋の2Kの間取りのお部屋をリノベーションして、ワンルーム化した事例です。
告知事項があり、築年数も経過していたためフルリノベーションを行いました。
9.5畳の広めのワンルームとなったことで、家具配置もしやすく、光も隅々まで届く明るい印象のお部屋になりました。
(水回りafter)
白い天板を使用したデザイン性の高い2口コンロ付きのキッチン、木目が優しい印象の浴室、TOMOSオリジナル造作洗面台など、他の物件では見られないデザインの水回りで付加価値を高めています。
当物件は入居者様へ告知事項をお伝えした上で、施工中に入居申し込みをいただきました。
従前よりプラス1000円の賃料で成約し、2年後からは賃料をさらに上げて募集をする予定となっています。
この物件の詳細はこちらからご覧ください
>>「告知事項がある物件の運用方法に悩んでいる」
賃料が極端に安くなってしまうイメージのある事故物件ですが、リノベーションで内装や設備を充実させることで「良いお部屋に相場家賃よりも安く住める」という訴求ができ、賃料水準を保ったまま入居付けができます。
所有物件で事故が起きてしまった、事故物件化して以降賃料が下がり続けていることにお悩みのオーナー様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度グッドルームにご相談ください。