学生向けマンションをお持ちのオーナー様からよくご相談頂くのが、
「入学シーズンを逃すと、入居が決まらない」
「平米数が狭くほとんど学生しか入居しないので、賃料が上がらない」といったお悩みです。
同じように、空室や賃料の下落にお悩みの学生向けマンション・アパートオーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、同じ課題を抱えていた大型学生向けマンションのリノベーション事例をご紹介します。
こちらのお部屋では、18㎡の2部屋を繋げ約36㎡の1部屋にする二戸一リノベーションを実施し学生から社会人へとターゲットを変更しました。
そして、全2部屋で周辺相場より1万円高い賃料で施工中に申し込みを獲得することができました。
目次
1.学生向けマンションの現状
学生向けのマンションは、
- ターゲットが明確なため、ターゲットに合わせた物件づくりがしやすい
- 入居・退去時期が読めるため、次の募集準備がしやすい
- 大学の移転などがない限り、基本的には需要が安定している
といったメリットがあります。
一方で、
- 約95%の入居者が4年以内に退去し、他の属性と比較して入居期間が短い(※1)
- 卒業を機に大量の空室が出るリスクがある
- 入学シーズンを逃すと長期空室になる可能性が高い
といったデメリットを抱えています。
(※1)公共財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協短観 2020年度上期データ
また、日本では少子高齢化により大学の入学年齢である18歳の人口は1992年をピークに減少しています。
2010年代までは大学進学率の上昇により学生数は微増していましたが、これまで上昇してきた大学進学率もついに頭打ちとなり2017年をピークに大学進学者数は減少していくと予測されています。(※2)
(※2) 文部科学省「Ⅳ. 18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置」
そして学生の獲得競争が激化する中で、近年では学生の獲得を目的に、都心にキャンパスを新設したり郊外キャンパスから都心キャンパスへ学生を集約させる都心回帰の流れが生じています。
大学の撤退は、これまで近隣大学の学生需要に依存してきた物件にとっては大きな打撃となります。
そのため、学生需要に依存しすぎてしまうことは危険であると言えるでしょう。
さらに、2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染拡大以降、大学のオンライン授業化が推進されたことにより下宿を控える学生も増えています。
今や学生向けマンションは、入居期間が短期であることや卒業に伴う大量空室など学生の特性による事柄だけでなく、少子化による学生数の減少、大学キャンパスの都心回帰による需要減少、オンライン授業化による下宿率の低下という変化に伴う新しい課題も抱えています。
学生をターゲットとすることは毎年一定の需要が見込めるというメリットがある一方で、このようなリスクを抱えていることも十分に理解する必要があります。
2.オーナー様のお悩み
全121戸の大型マンションを所有しているオーナー様。
全部屋が18㎡の同じ間取りのお部屋で、学生をメインターゲットとして賃貸運営されていました。
しかし、
- 同じ間取りばかりで中々満室にならない
- 18㎡と狭小のため工夫が難しく、通常リフォームを行っても年々賃料が下がっている
- 学生数の減少や下宿率の低下で入居が付きづらい
といったお悩みを抱えていらっしゃいました。
これらの課題を解決するため、様々な工夫を行えるとともに学生から社会人にターゲットを変更できる二戸一リノベーションをご提案しました。
二戸一リノベーションって?
二戸の界壁を取り一戸にするリノベーション方法です。
平米数の問題から、入居が決まりづらく賃料も上げづらい狭小物件ですが、二戸を繋げ広いお部屋にリノベーションすることで、
- 居室面積が広がる
- 設備が整ったお部屋にすることができる
- 入居者層が広がる
といったメリットがあり、賃料の上限も上がるため収益物件へと生まれ変わらせることができます。
1.リノベーション内容
リノベーション効果を最大限化するために行った二戸一リノベーションをはじめ、社会人をターゲットにするにあたり様々な工夫を施しました。
①2部屋を繋げて、ゆったり暮らせる36㎡のワンルームに
(左:リノベーション前 右:リノベーション後)
18㎡の2部屋を繋げて約36㎡のワンルームに。
一人暮らしでは十分にゆとりがある、開放的なお部屋となりました。
また平米数が広がったことで様々な施工を行うことができ、賃料の上がり幅を大きくすることができました。
学生と比較して予算に余裕のある社会人をターゲットとすることで、賃料アップが見込めることはもちろん、
ターゲットの母数が増え、また入学・卒業に左右されるという時期的要因や大学撤退・授業のオンライン化といった外的要因の影響を受けることがなくなったことで空室リスクが軽減されました。
②3点ユニットバスの分離
学生向けマンションとしてはメジャーな3点ユニットバスを分離しました。
18㎡のまま施工を行うと居室面積が狭くなってしまう可能性がある3点ユニットバスの分離ですが、2部屋を繋いだことで広さを十分に確保した上で実施することができました。
(リノベーションで新設された洗面台とトイレ)
独立洗面台やウォシュレット付きトイレの設置は、ターゲットを社会人とする上で重要な施工です。
それぞれ新設して使い勝手が良くなったことはもちろん、棚やトイレットペーパーホルダーなどの小物には木材を使用することでお部屋との統一感を持たせました。
統一感を持たせることで、多くの人に良い印象を与えることができます。
③カウンターキッチンの設置
(左:リノベーション前 右:リノベーション後)
元々は、1口コンロのコンパクトなキッチンが壁面に向かって設置されていましたが、2口コンロ付きのカウンターキッチンに交換しました。
来客の際にもコミュニケーションをとりながら料理ができ、開放感も生まれるカウンターキッチンは世代を問わず人気の設備です。
1口コンロはお料理好きの方が懸念に感じることが多いため、2口コンロに変更し使い勝手が良くなりました。
また、シンプルな白を基調としたキッチンであるため、お部屋の内装ともよく馴染みます。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛が促される中で自炊をする方が増えており、キッチンを重要視される方も増えていることが予測されます
そのような状況下だからこそ、賃貸物件では一般的な簡易的なキッチンではなくカウンターキッチンなど特別感のあるキッチンを設置することで近隣物件との大きな差別化を図ることができます。
>>関連コラム「キッチンリノベーションでつくる、入居者・オーナー双方良しのお部屋」
④有孔ボードの設置
さらに訴求力を高めるため、有孔ボードを設置しました。
有孔ボードとは、等間隔に沢山の穴が開けられたボードのことで、小棚やフックを組み合わせることでお気に入りのアイテムを飾ることができます。
鍵をフックに吊るしたり、棚に写真を飾ったりと使い方は様々。
壁に穴を開けられない賃貸住宅でもプチアレンジを楽しめる有孔ボードは、多くの方にお喜びいただける設備となっています。
⑤大容量の収納
二戸一とするにあたり、コンパクトな収納から2軒分の大型収納に変更しました。
学生と比較し所有する家具や私物が多くなる傾向にある社会人にとっては、収納力もお部屋探しの際の重要なポイントとなります。
収納の前のスペースは寝室として使用されることが予想されるため、大型家具であるベッドを余裕を持って置けるように扉はスライド式の引違い戸を取り付けました。
4.リノベーションの効果
リノベーションの結果、賃料が4万円まで下がりなおも空室を抱えていた学生向けマンションでしたが、
賃料7.8万円/戸で、全2部屋が施工中申し込みを獲得しました。
従前の2戸分の賃料から考えるとやや低くはなっていますが、同築年・平米数の周辺相場賃料は6.8万円程度であるため相場よりも1万円高い賃料となっています。
全121戸全てが学生向けの仕様であった当物件でしたが、一部を社会人向けのお部屋にリノベーションしたことで、空室リスクが分散され、卒業時期に大量空室が出るというオーナー様のご不安を軽減することができました。
今回は、学生向けマンションの空室を解消する手段として2部屋を1部屋につなげる二戸一リノベーションをご紹介しました。
今後も、少子高齢化は進み学生数はどんどんと減少していくことが予測されています
グッドルームでは、最新の入居者ニーズに合ったターゲット設定やリノベーション施工を行い収支改善のお手伝いをしています。
学生向け賃貸や、狭小のお部屋の空室にお困りのオーナー様はぜひ一度ご相談ください。