日本の中で最も人口が多い、首都東京。
新型コロナウイルスが発生する2019年までは、転入者が転出者を上回る転入過多の状況が続き人口減による地方都市の過疎化が問題視される一方で東京への一極集中が続いていました。
賃料相場が高く賃貸需要も高い東京でリノベーション投資を検討される方も多いでしょう。
しかし東京と一口にいってもエリアごとに特性があります。
また、空室になりやすい物件を選ばないためにはその地域の入居者ニーズを把握することも重要です。
今回は東京都内でリノベーション投資先を選ぶ際の参考として、東京都各エリアの地域特性とグッドルームでお部屋探しをされているユーザー様の傾向をもとに入居者特性をご紹介します。
目次
賃貸経営で利益を得るために必要なこと
まず、不動産から得られる収益は2種類あります。
一つは、物件を売却した際に得られるキャピタルゲインです。
物件を購入し、購入価格よりも高い価格で売却できるとその差額が収益となります。
もう一つが、賃貸経営を行うことで得られるインカムゲインです。
物件を貸し出すことで得られる賃料収入を指し、キャピタルゲインと異なり継続性があります。
今回はインカムゲインを得ることを主目的とした不動産投資を行う場合を想定して、利益を得るために必要なことをご紹介します。
1.満室であること
当然ではありますが、空室では賃料収入を得ることができません。
そのため何よりも重要なことが物件を満室で稼働させることです。
人口が多い東京においても空室率は2020年9月段階で13.25%あり(※1)、満室になるよう空室対策を施さなければいけません。
(※1)株式会社タス「賃貸住宅市場レポート首都圏版関西圏・中京圏・福岡県版 2020年11月」
空室に困りにくい物件の特徴は様々ありますが、エリアは最も重要な要素のひとつです。
内装や外装はリノベーションなどで変更することができますが、立地は変えられません。
なるべくターミナル駅へのアクセスが良い駅や、住みたい街ランキングに入っておりブランド力がある街など、賃貸需要の高い人気エリアを選ぶことがおすすめです。
また一般的に人気のあるエリアだけでなく、そのエリアのターゲット層に合った物件であることも重要です。
例えば、繁華街近くのお部屋は主に治安の面からファミリー層には選ばれにくい傾向にあります。
一方で、単身者であれば治安を気にしないということではありませんが、飲食店が豊富なことや街灯や店舗の灯りで遅い時間でも明るいことは日頃帰宅が遅くなることが多い単身者には嬉しい環境です。
このように立地によって入居者は異なります。
検討エリアの賃貸需要を把握するとともに、ターゲット層を推測しましょう。
そして、平米数や構造など後から変えられない項目に留意して、ターゲット層にマッチする空室となりづらい物件を選びましょう。
2.適切な賃料設定
空室にしないことも大事ですが、相場より著しく低い賃料で満室稼働させようとすることはおすすめできません。
賃料の低さを売りにすると、永続的に競合物件との価格競争が生じ賃料を下げ続けなければならなくなります。
賃貸経営は、税金や物件の修繕費など継続的にコストがかかります。
賃料を下げてしまうとその分賃料収入も少なくなるため、物件維持に必要なコストが賄えなくなる可能性があります。
さらに十分に修繕が行われていないためまた賃料を下げざるを得ないという負のスパイラルに陥ってしまいます。
その結果、購入時の想定よりも収支が悪くなります。
そのため安易に賃料を下げることで入居を決めようとするのではなく、あくまでも適正賃料で運用することを目指さなければなりません。
3.物件管理
インカムゲインを目的とする場合、物件を長期的に運用してこそ利益が出るものです。
そのため長期運用ができるように、物件の管理が不可欠です。
修繕などの建物管理や、賃料の集金や入退去・トラブル発生時対応など運営管理業務があります。
これらの管理をきちんと行うことで物件価値が持続し賃料収入の総額も大きくなります。
管理は管理会社へ委託するか、または自主管理と呼ばれるオーナー様ご自身で行なっていただく管理方法が一般的です。
しかし、管理業務は入居者トラブルなどいつ発生するか分からない業務もあり大きな労力がかかります。
そのため自主管理で全ての業務を自身で行っているオーナー様は約20%にすぎず、多くの方が管理会社を利用しています。(※2)
(※2) 国土交通省「令和元年 賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」
また、併せて入居審査も重要です。
支払い能力がある方はもちろん、お部屋を丁寧に使っていただけそうな方に賃貸しましょう。
退去後のお部屋の状態は、入居者様の暮らし方により大きく異なります。退去後に部屋の状態が悪いと原状回復費が大きくかかってしまいます。
また、丁寧に扱ってくださる方を選ぶことに加えて、大切に扱いたくなるようなお部屋を提供するという視点も重要となります。
定期的なメンテナンスを欠かさずきれいな状態に保ち、大切にしていただけるお部屋を目指しましょう。
エリアの選び方
物件選びの中でも特にエリアは大事な要素です。
お部屋探しの際には、ほとんどの方が立地検索を用いてお部屋を選ばれています。
ではどのような基準でエリアを選べば良いのでしょうか?
賃貸収入(インカムゲイン)を目的とする投資の場合、物件の購入価格と得られる賃料のバランスが重要です。
このことを踏まえて、具体的にどのような指標を確認すれば良いのかご説明します。
1.地価
東京都の1㎡あたりの地価
令和2年地価公示価格(東京都分)の概要より作成
土地の平均価格を表す地価は購入価格の参考になります。
上記は東京都内住宅地の平米単価を表したマップです。
都心エリア(特に千代田区・港区・中央区・渋谷区)の価格が最も高く、そこから離れるほど低くなっていきます。
好立地な物件は他地域と比べて衰退しづらいため、今後も高い物件価値を持続できることが期待できます。
しかし、例えば最も地価が高い千代田区では3位の渋谷区と比較しても倍以上の平均価格ですが、賃料相場も倍であるわけではありません。
このように、好立地物件は購入価格が高すぎるために他区域より高い賃料を得ても利回りは悪くなる傾向にあります。
そのためインカムゲインを目的とする投資にはあまり向いていません。
現在の地価よりもさらに上昇することを期待し、キャピタルゲインを得ることを目的とする投資としては良いエリアでしょう。
2.平均賃料
東京都ワンルームの平均賃料
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会公表 賃料相場:東京都より作成
賃貸経営における利回り算出には、物件購入価格とともに賃料を使用します。
上記は都内のワンルームの平均賃料マップです。
賃料は物件のスペックや駅徒歩分数などでも変わるためあくまで参考ではありますが、相場を比較することができます。
基本的には地価の順位と類似していますが、中には地価の割に平均賃料が高いエリアが紛れています。
このようなエリアが狙い目となります。
3.人口上昇率
2020年度を1とした際の2040年の人口上昇率
東京都総務局統計部区市町村、男女別将来人口-総数-より作成
2045年には全国の市区町村の99%で人口が減少すると言われています。(※3)
人口は住宅の需要に直結するため、今後の増減予測は見ておくべき指標です。
東京は他の都道府県と比較すると人口の減少は緩やかですが、20年後の2040年には東京でも多くの市区町村が減少に転じます。
コロナウイルスの発生により、2020年から転出超過が見られたことを踏まえると減少スピードはこれまでの予測よりも加速する可能性があります。
(※3)国立社会保障・人口問題研究所日本の地域別将来推計人口(平成 30(2018)年推計)-平成 27(2015)~57(2045)年-
4.開発予定
都市開発計画が予定されている地域は、今後地価や賃料の上昇、賃貸需要の増加が期待されます。
2020年6月には、浅草駅からとうきょうスカイツリー駅間の高架下を利用した再開発が行われ、「東京ミズマチ」という名称で商業施設がオープンしました。
このような再開発予定の情報は常にアンテナを張っておくべきできです。
東京都のエリア特性と入居者特性
ではそれぞれのエリアにはどのような特性があるのか、またどのような方が入居される傾向にあるのでしょうか?
お部屋探しポータルサイト「goodroom」のユーザー様情報を基に、それぞれの特徴をご紹介します。
【エリア別】
都心エリア(港区、千代田区、中央区、新宿区、文京区、渋谷区)
皇居を中心とした都心エリアは東京都の中で最も地価が高く、治安が良い街ランキングでも上位を占める区です。
特に港区・千代田区・中央区・渋谷区は地価・平均賃料ともに高くなっています。
他の区域では人口減少が予測される中で20年後も人口増加が予測されていることから人気の高さが伺えます。
グッドルームのユーザー様において、リノベーション物件を探されている方が最も多いエリアが港区です。(※4)2021年3月現在 ポータルサイト「goodroom」検索履歴より
このことからリノベーション物件の需要は高いエリアだと予測することができます。
このエリアでお部屋探しをされる方は高年収の方が中心で、高賃料に見合うハイグレードなお部屋を求められます。
需要が大きい一方でリノベーション物件の供給数も多いエリアであるため、
マンショングレードや設備はもちろん、内装にも力を入れて、高賃料でも選ばれる部屋にすることが重要です。
一方で、新宿区・文京区はこれら4区と比較すると賃料は高額ではありません。
しかし、新宿区は通勤時間を考え立地の良さを重視したい単身者の方を中心に人気があります。
文京区は治安が良いことでも知られ、そのためファミリーでお部屋を探されている方にも人気があります。
>>都心エリア 港区のリノベーション投資事例はこちら「No.50 内装リノベーションで、さらに高価格帯のお部屋を目指したい」
城東エリア(江東区、墨田区、江戸川区、足立区、台東区、荒川区、葛飾区)
千葉方面に隣接する城東エリア。
浅草などがあり、下町感を感じられるエリアです。
特に江戸川区、江東区は23区の中でも公園の面積が23区内で1位と3位となっており、ファミリー世帯も多く住んでいます。(※5)
(※5)東京都建設局公園調書(令和2年4月1日現在)
江東区、墨田区は隣接する台東区の地価の5割程度にも関わらず、平均賃料は同水準となっており投資先として注目エリアです。
しかし、江戸川区、江東区は川や海に近いエリアのため自然災害による被害履歴に注意しなければなりません。
現在では、ハザードマップの情報を賃貸契約時に説明する義務があり、自然災害の被害を受けたことがあるお部屋は入居が決まりづらいです。
海辺に近いエリアでも、構造や階数によっては被害を受けづらくなります。
江戸川区・江東区、荒川区、世田谷区二子玉川、川崎市など、海辺に近いエリアで物件を購入する際には、ハザードマップや物件の構造、過去の被害履歴を確認しておきましょう。
一方、北側にある足立区、台東区、荒川区、葛飾区に関しては荒川を境に北上すると賃料が下がります。
足立区は治安があまり良くないと言われていますが、北千住駅などは栄えており好きな街として挙げる単身者も多くいます。
治安が悪いと言われていても、家までの道が明るかったり、オートロック付きなどセキュリティー面がしっかりしてるマンションであればOKという方も多数いらっしゃるため、物件周辺の環境をチェックしてから購入しましょう。
>>城東エリア 江戸川区のリノベーション投資事例はこちら「No.70 リノベーションで、投資用物件の収益を最大化したい」
城西エリア(中野区、杉並区、練馬区)
中央線、京王井の頭線、東急線東横線、東急田園都市線など人気のある路線が通り都心へのアクセスも良く、治安が良い街が並びます。
自然や商店街なども多いためどんな方でも住みやすく、賃貸だけでなく実需物件の購入を検討される方も多くいらっしゃいます。
グッドルームでは、「中央線沿いが良いが賃料が高く手が届かない」というユーザー様に対して、中央線と平行して走っているものの賃料帯が下がる西武新宿線などの路線沿いの物件をご案内することが多くあります。
中央線沿いは人気が高く賃料も高めに設定できますが、物件価格も高額になります。
手が出しにくいと感じられる場合は、比較的購入価格を抑えられながらも中央線の人気の高さの恩恵を受けることができる近隣の沿線沿いの物件を検討されることもおすすめです。
グッドルームユーザーの特徴としては、中野区は単身世帯、杉並区はファミリー世帯に人気がある傾向にあります。
とはいえ老若男女問わず人気のエリアのため、よほど状態が悪いマンションでなければ空室には困りにくいでしょう。
駅から遠い場合などはリーシングに不利になりますが、リノベーションを行うことで懸念を払拭させることができます。
>>城西エリア 杉並区のリノベーション投資事例はこちら「No.79 駅からバス便の立地、RCマンションの空室を改善したい」
城南エリア(世田谷区、目黒区、大田区、品川区)
神奈川県に隣接する城南エリア。
特に閑静な住宅街が多い世田谷区や、自由が丘や中目黒などおしゃれなスポットが集まる目黒区はグッドルームユーザー単身者にとても人気のエリアです。
リノベーション物件を探されているユーザーも都心部エリアに次いで2番目に多いエリアです。
一方で、供給については都市部エリアを上回る供給数となっています。(※6)2021年3月現在 ポータルサイト「goodroom」検索履歴より
需要が大きいエリアではありますが供給数も多いため、ただリノベーションを行えば良いわけではなく、競合物件といかに差別化できるかが重要でしょう。
大田区は北部・南部で印象が変わり、北部は落ち着いた住宅街、南部はにぎやかな印象になります。
このエリアは羽田空港に近いため、かつては空港関係者に人気がありました。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、現在は空港関係者の需要が減少しています。
都心部へのアクセスが良いため高めの賃料設定となっていましたが、需要減少により入居付けに苦戦している物件が増えています。
品川は新幹線の始発駅でもある、ターミナル駅です。
出張など移動が多い方には好まれるエリアです。
また今後も人口増加が見込めている数少ない区域の1つであり、港区・千代田区・中央区・渋谷区についで平均賃料が高い区です。
しかし地価に関しては最も低い中央区と比較しても3分の2程度となっているため、投資先として期待ができるエリアです。
品川区内においても、大井町線などマイナー路線や各駅停車のみ利用できる駅周辺は賃料相場が下がります。
近隣に位置していても城南エリア内で街の雰囲気は異なり、それに伴い入居者層も異なります。
どの区のどこに位置するのか正確に把握し、ターゲットを絞ることが必要です。
>>城南エリア 世田谷区のリノベーション投資事例はこちら「No.32 賃料を下げるならリノベして賃料アップ&客付けしたい」
>>城南エリア 大田区のリノベーション投資事例はこちら「No.101 設備交換のタイミングでリノベーションし賃料を上げたい。」
城北エリア(豊島区、板橋区、北区)
埼京線が通る、埼玉寄りのエリアです。
大きな駅としては、池袋や赤羽が挙げられます。
池袋がある豊島区は、文京区に近い山手線内側に大学が多く治安も内側の方が良い傾向です。
反対に山手線の外側、西側は住宅街となっておりファミリー層が増えます。
城南エリア同様に、城北エリア内でも場所により雰囲気が異なります。
立地を把握するとともに、可能であれば街を実際に歩いてみると良いでしょう。
住人の様子が分かり、ターゲット選定と物件選びの参考になります。
昼間ではなく、帰宅時間である夕方頃に訪れると良いでしょう。
城北エリアにおけるユーザーのリノベーション物件検索回数は他のエリアと比較して4分の1〜10分の1程度と著しく低くなっています。
また、リノベーション物件の供給数は1位の城南エリアと比較して4分の1程度となっており、リノベーション物件の流通はそれほど活発ではないことが伺えます。(※7)2021年3月現在 ポータルサイト「goodroom」検索履歴より
そのためこのエリアでリノベーション投資を検討される際は、需要があるのか慎重に見極める必要があります。
一方で、競合となる物件が少ないため、リノベーションを行うことで大きく差別化することができる可能性があります。
>>城北エリア 板橋区のリノベーション投資事例はこちら「No.80 投資用マンションの賃料をリノベ−ションで最大化したい」
市部・その他エリア
23区外には26市、5町、8村がありますが、その中でも駅周辺が栄えており人気があるのが
町田市・国分寺市・立川市・国立市・三鷹市などです。
これらの市は都心から少し離れるものの、電車網が発達しておりアクセスしやすい環境にあります。
例えば新宿駅から町田駅へ行く最終電車は小田急線で0:20発(2021年3月現在)となっているほどです。
通勤においても数十分で都心へアクセスできるため、ファミリーや安い賃料で広い部屋に住みたい単身者に人気があります。
これら地域では、賃料相場が安くなる分、設備が充実した部屋を選ぶ傾向にあります。
室内設備が増えると居住空間は圧迫されるため単身をターゲットとする場合も、25㎡以上の比較的ゆったりとしたお部屋を選ぶと良いでしょう。
昨今では、リモートワークが増えたことを理由に市部に移住される方もいらっしゃいます。
自宅滞在時間が長くなり、居室の広さやインターネット環境でお部屋を選ばれる方が増加しています。
市部に移住される方は、賃料を据え置きながらも広いお部屋を求められているためそのニーズとマッチする物件を選ぶと良いでしょう。
>>市部・その他エリア 国分寺市のリノベーション投資事例はこちら「No.51 賃料はアップさせたいが、本当に客付けできるのか不安」
不動産投資を行う際は物件価格や想定賃料から算出する利回りがとても重要です。
しかし各エリアにはそれぞれ特徴があります。
収支のみでなく、その地域の雰囲気や入居していただけそうなターゲットを把握することでより空室になりづらい人気物件を選ぶことができます。
また、購入した物件をリノベーションして運用するリノベーション投資も近年注目されています。
グッドルームでは仲介部から得た最新の入居者ニーズをもとに、各物件に適したリノベーションをご提案しています。
より良い形で物件を運用していくため、中古物件のご購入をご検討されている方はぜひ一度ご相談ください。